ミジンイモムシタケ
Cordyceps sp. Y.Kobayashi

発生地:山形県・羽黒
採集年月日:Sept.29,1988

鱗翅目Lepidoptera、ヤママユガ科Saturnaiidaeの 幼虫に寄生する最も美麗な大型の虫草菌である。

鱗翅目に寄生する虫草は中国の冬虫夏草Cordyceps sinensis Sacc.を初めとして広い世帯を持つ虫草菌群であり、本菌は本邦最大の蛾の幼虫であるヤママユガAntheraea yamamaiのイモムシに寄生する。他にイモムシに寄生する代表的虫草としてトサカイモムシタケが知られているが、本菌に比較すると一回り小さく、色合いも朱色、暗朱色で子実体の美しさを異にする。

イモムシの頸部、背部、ときには尾部より鮮やかな紅橙色の美しい子実体を発生させる。地生型の虫草で、発生周囲の植物層にはタニウツギ、オオカメノキ、 クヌギ、コナラ、クリ、カシワ、ヌルデ、ツバキ、高木ではマツ、ホウノキが生育し、この樹層を囲んで樹齢30年以上の杉林が並んでいる。近くに鉄分を含ん だ赤サビ色の水溜まりが散在し、流れを作っている。

宿主である虫hostの大きさ4〜7cmになる。

子実体stromaは棍棒型、ときに不規則偏平型となり、結実部の表面には子嚢果ascomaを密布、発生させる。柄は白色、後に淡黄色、捩じれ状でやや柔らかい肉質、基部は複雑に絡み、子実体は大小約3〜16本叢生、高さ1〜11cmに及ぶ。

子嚢殻peritheciumは細かく、裸生型で、頭部の子嚢果表面に粒点状に密布する。卵形、または楕円形で大きさ 400-420×180-200μ。

子嚢胞子ascosporeは細長い糸状で、空中に放出後、隔壁から分裂して冊状の2次胞子sec.ascosporeとなる。大きさ 3-8×0.8-1.2μ、子嚢胞子頭部cap of asciは球形2.0×1.6μ。

日本特産

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.29 No.1より